ラスベガス、マカオ、シンガポール……。
海外にはカジノが有名な都市があります。
日本では今のところカジノは認められていませんので、せっかく来たんだから行ってみよう!とカジノに行く日本人は多いです。
でも、せっかくカジノに行くのですから、できることなら勝って帰りたいですよね。
そうなると気になるのは、カジノの「必勝法」ってやつです。
あれって本当なのでしょうか?
そこで今回は、巷で言われているルーレットの必勝法について、数学的に考えていきたいと思います。
カジノのルーレットの必勝法って本当にあるの?
まず、カジノのルーレットの必勝法と言われている戦略について簡単に説明していきましょう。
必勝法① マーチンゲール法
1つ目の有名な方法は、「マーチンゲール法」というやつです。
これはどういう方法かというと、
初回は最小ベットで赤か黒に賭けて、負けたら掛け金を2倍にして、勝ったら最小ベットに戻る
という方法です。
ちょっと試しに例を出してみましょう。
回数 | 賭け金 | 勝負 | 損益 | 累計損益 |
1 | 1 | 負け | -1 | -1 |
2 | 2 | 負け | -2 | -3 |
3 | 4 | 勝ち | +4 | +1 |
回数 | 賭け金 | 勝負 | 損益 | 累計損益 |
1 | 1 | 負け | -1 | -1 |
2 | 2 | 負け | -2 | -3 |
3 | 4 | 負け | -4 | -7 |
4 | 8 | 負け | -8 | -15 |
5 | 16 | 負け | -16 | -31 |
6 | 32 | 負け | -32 | -63 |
7 | 64 | 勝ち | +64 | +1 |
回数 | 賭け金 | 勝負 | 損益 | 累計損益 |
1 | 1 | 負け | -1 | -1 |
2 | 2 | 負け | -2 | -3 |
3 | 4 | 負け | -4 | -7 |
4 | 8 | 負け | -8 | -15 |
5 | 16 | 負け | -16 | -31 |
6 | 32 | 負け | -32 | -63 |
7 | 64 | 負け | -64 | -127 |
8 | 128 | 負け | -128 | -255 |
9 | 256 | 負け | -256 | -511 |
10 | 512 | 勝ち | +512 | +1 |
どうでしょうか?
マーチンゲール法で勝つまで賭け続けるだけで、絶対にプラスになるということが分かるかと思います。
おお、これは必勝法っぽいですね。
数学的にこれは正しいのでしょうか?
結論から言うと、数学的にはこの方法は正しいです。
ですが、現実問題としては、この方法で稼ぐことは極めて困難といえます。
……どういうことでしょうか?
このマーチンゲール法には、問題点が2つあります。
1つ目の問題は、倍々ゲームに耐えるだけの手持ち資金がないと成り立たないこと。
2つ目の問題は、勝ったときに手に入れる金額が、最小ベット金額になってしまうこと。
この2つです。
1つずつ見ていきましょう。
問題点① 倍々ゲームに耐えるだけの手持ち資金がないと成り立たない
先ほどの表を見て分かるとおり、この方法では負け続けるごとに賭け金が倍々に増えていきます。
例えば、あなたの手持ち金額が10万円、最小ベット金額が1000円だったとします。
すると、2回目の賭け金は2000円、3回目の賭け金は4000円……と増えて行きます。
まだこれくらいなら平常心を保てそうですが、もし5連続で負けると、累計の損失は-31000円、次の6回目の賭け金は32000円になります。
10万円あった資金が残り69000円になった後の一発32000円ベットです。
このプレッシャーに耐えられますか?
しかも、もしここで外してしまうと損失は63000円。
7回目の賭け金は64000円なので、残り資金37000円ではマーチンゲール法で賭けることができません。
このように、手持ちの資金量が無限にないと、マーチンゲール法で現実に勝つことは難しいのです。
「でも6回連続で外すことなんてあり得ないでしょw」と思うかもしれませんが、意外とそんなことはなかったりします。
その理由についても説明していきますね。
問題点② 勝ったときに手に入れる金額が、最小ベット金額になってしまう
もうひとつの問題点は、勝ったときに手に入れる金額が、最小ベット金額になってしまうことです。
この言い方だと分かりにくいと思いますので、先ほどの表に戻ってみましょう。
先ほどの表を見ると、マーチンゲール法で勝った場合、累計損益のところが必ず「+1」になっていますよね。
つまり、最少ベット金額が1000円の場合、1回目で勝っても+1000円、3回目で勝っても+1000円、10回目で勝っても、最終的な損益は+1000円にしかならないのです。
あなたは1000円勝ったら満足ですか?
そんなことはないですよね。
「数万円とか勝ったらいいなあ~」なんて期待をしているはずです。
じゃあ、例えば5万円勝つことを目標金額としましょう。
条件は、
・目標金額は+5万円
・最小ベット金額は1000円
・手持ち資金は10万円
としましょうか。
1回の勝ちで1000円プラスになるとして、5万円勝つということは、50回勝たなければいけないということです。
確率2分の1で50回勝つということは、大体100回くらいルーレットを回すことになります。
一方で、先ほどの表の通り、7回連続で負けると損失が-12万7000円になりますので、7回連続で負けたところで破産、続行不可能とします。
では、
「ルーレットを100回回して、7回連続で負ける確率」
はどれくらいなのでしょうか?
これが分かれば、この必勝法でどれくらい勝てるのかが分かりますよね。
この確率は結構難しいので読み飛ばしてもらって構いませんが、式としては、
p(1)=p(2)=p(3)=p(4)=p(5)=p(6)=0
p(7)=p(8)=(1/2)^7
としたときの
p(100)
となります。
これを計算すると、31.5%という確率が出てきました。
すなわち、
31.5%で10万円を失って破産
ということになります。
このギャンブル、あなたなら参加したいと思いますか?
31.5%って結構大きいと思いませんか?
そんな確率で全財産を失うのです。
私だったら、さすがにリスクが高すぎると判断します。
ちなみに、今回は目標額を5万円と設定しましたが、「目標額を決めない」というのは最も危険です。
なぜなら、
目標額を決めない=破産するまで引き際が分からない=必ず破産する
からです。
というわけで、マーチンゲール法は机上の空論、実際にはまったく使えない「必勝法(笑)」であることが証明されました。
では、続いての必勝法(笑)に行きましょうか。
必勝法② 6連続赤が出たから次は黒に賭ける作戦
こちらも、なぜかよく聞く必勝法です。
この作戦の言い分としてはこうです。
「7回連続赤が出る確率は、2分の1の7乗=128分の1だ。そんな低い確率が出るわけがないから次は黒に賭ける」というものです。
ですが、これは数学的にはまったく正しくありません。
マーチンゲール法は「数学的には正しいが、現実には不可能」な方法だったのに対して、こちらの方法は「数学的にも正しくない」のでもっとどうしようもない作戦です。
そもそも、直前までに何回同じ色が出ようとも、それまでの色は次回の色になんの影響も与えないことは、常識的に考えれば分かると思います。
ただし、これはあくまでも、ディーラーがルーレットの出目を操作できないという前提のもと、純粋に数学として考えた場合です。
実際はディーラーは出目を操作できるという噂もあります(真偽は分かりませんが……)。
もしあまりにも偏った出目が連続で出ると、プレイヤーにイカサマを疑われてしまうかもしれませんよね。
それを避けるために、何連続か同じ色が出たら、ディーラーが上手くコントロールして違う色を出させることもあるかもしれません。
ですが、結局これは想像でしかありませんので、この方法も必勝法でもなんでもないということになりますね。
おまけ:必負法
おまけですが、「必勝法」ならぬ「必負法」があります。
「必負法」があるなら、その逆をすれば必勝法じゃん!と思うかもしれませんが……。
残念ながらこの方法はどうやっても「必負法」にしかなりません。
その方法は何かというと、「長時間ルーレットで遊ぶこと」です。
これはどういうことかというと、ルーレットには、赤と黒のほかに、「0」「00」という緑のマスがあります。
このマスは要するに外れマスで、ディーラーの総取りになります。
つまり、ルーレットの赤黒って2分の1の勝負ではなく、若干2分の1よりも低い確率でしか勝てないのです。
そして、ルーレットを長時間遊び続けると、得られる金額は数学的な期待値の値にどんどん収束していきます。
完全に2分の1の確率であれば、プラスマイナスゼロに収束していくのですが、2分の1よりも低い確率でしか当たらないとなると、その期待値はマイナスに収束していきます。
そのため、ルーレットで長時間遊ぶということは、どんどん負けに近づいているということです。
ちなみに、すぐに切り上げれば勝てる確率が高いと言っているわけではありません。
すぐに切り上げる場合、確率としてはやっぱり負ける確率のほうが若干高いのですが、確率が収束しないので、「勝つ人もいれば負ける人もいる」という状態になるだけのことです。
長時間やると、「ほぼ全員負ける」状態になります。
まとめ
というわけで、結局ルーレットの必勝法は、数学的に検証してみると必勝法でもなんでもありませんでした。
というか、そもそも本当に必勝法が存在するのなら、カジノは経営していけないですよね。
「カジノがやっていけている=プレイヤーは搾取されている」ということなのです。残念ながら。
ですが、勝ち負けにこだわらずにカジノという非日常空間を楽しむことはもう全然アリだと思います。楽しいし。
なので、「勝ったらラッキー」くらいの軽いノリで行きましょうね。
くれぐれもハマりすぎないように気をつけてくださいね!